「どうぞ、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」 柔らかくにこりと微笑み、ゆったりとした口調でそう言ったあと、あたしは客室のドアを静かに閉めた。 はぁー……。 最後の言葉、噛まずに言えたよ。 『ごゆっくりどうぞー』じゃダメなのかなぁ。 そんなことを思いながら。 長い客室フロアーを、背筋を伸ばしモデルのように練り歩く。 常に笑顔。 常に姿勢正しく。 ……って、誰もいないのに。 なんだか笑える。