私が少し拗ねている様子を見かねた柊は、半分こにしたあんまんをこっちに手渡してきた。


「俺の分もあんまんやるから」


「わー!ありがとう!」


 肉まんも大好きだけれど、やっぱりあんまんが好きだなぁ。嬉しくてつい頬張ってしまう。


「って!餌付けして私を彼女にしようというのか!」


「ばれたか」


「そんなんでOKするわけないでしょ!ちょろすぎか私」


 こんな可愛げのない返答しかできない私を、本当に彼女にしたいのだろうか?


「それで、付き合うのOKなの?だめなの?」


「う…」


 柊は、どうすんだよ、という目で私を見ている。好きな女の子(?)に告白するという、人生でも大きな局面だというのに、緊張したりしないんだろうか。まぁ相手が私だしなぁ。


「うーん…」


 柊とはずっと一緒にいるけれど、恋人になるなんて想像したこともなかった。でも確かに柊なら私のことなんでも知ってるし、一緒にいて気が楽だ。それに念願の彼氏持ちになるわけですよ。私だってもう高校二年生。彼氏の一人や二人、いて然るべきだろう。


 悩んだ結果、後者の意見がかなり大きく作用した。


「よし!付き合ってみよう!」


「ん、よろしく」


 柊は立ち上がると、私の手を握った。なにかの映画で観た外交官が、交渉成立だな、と言って手を握り合うシーンによく似ていた。


「帰るか」

「うん」


 小さい頃はいつもそうしていたように、手を繋いで家まで歩いた。



 こうして私達は突如として、幼なじみから恋人になった。