今度は3枚だ。


「亜希、お経を唱え続けて!」

「わかった! 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」

「悪霊退散!!」


和也は叫びながら鏡へ向けて手を伸ばした。
和也の右手は鏡をすり抜けて良子の体に届く。
良子が驚き、勢いで逃げようとするまえにその額に御札を貼り付けた。


「ギャアア!」


それは化け物の断末魔。
長い間幽霊としてここにとどまっていたせいで、ほとんど人間だったときの心を失ってしまった霊魂の叫び。

良子の体は鏡の中で黒い済になって消えていく。
その隣では純が若菜の体を抱きしめて震えていた。

その目には怯えの色が見えている。
さっきまで自殺したときの姿だったふたりだけれど、今は写真に映っていたときと同じ生きている時のふたりの姿に戻っていた。

良子が消されるのを見て、こちらを油断させる気かもしれない。
和也はもう1度お札を握りしめると鏡の中に手を突っ込んだ。

若菜が小さな悲鳴をあげて純にすがりつく。
純は若菜の体を強く抱きしめた。


「大丈夫よ若菜。お母さんは先に行ったから、怖くない」


純の言葉に亜希も和也も目を見開いた。
純にはまだ人間の心が残っているのかもしれない。