「ご入籍、おめでとうございます」
「……ありがとうございます」

マンション前に横付けされた車の後部座席のドアを開けた三井。
社長を迎えに来た彼は、朝の挨拶と共に祝いの言葉を向けた。

「三井、頼んだ名刺は出来上がってるのか?」
「明日にはご用意できるはずです」
「そうか。栞那、明後日の入社式から使えばいいよ」
「……ん」

システム部 統括部長 久宝 栞那と表記される名刺。
昨夜彼から聞かされ、覚悟を決めた。

彼に支えられながら車に乗り込む。
会社に着いたら一人で歩けるだろうか。
今日はあまり社屋内をウロウロせずに過ごさないとならなそうだ。

「社長、先は長いんですから、夜は程々になさって下さいね」
「ッ?!!っっっ~っ」
「手加減するつもりだったが、さすがに昨日はな」

そ、そそそそそそっ、そういうことは口に出さないで!
っていうか、三井さんっ!!
他人の夜事情に首を突っ込むのは止めて下さいっ!!

イケメン二人が真顔で話す会話じゃないです!
私の方がおかしいのかと勘違いしそうですから!!

恥ずかしすぎて顔が上げれない。
沸騰してるんじゃないかと思うくらい、顔が熱い。

「何、思い出した?」
「っっっ」

三井さんに聞こえないように、わざと耳元に呟いて来た。
軽く受け流せるスキルは持ち合わせてないのに。

「ごめん、苛めすぎた」

涙目の私を抱き寄せるように肩を抱く彼。
冗談が言えるようになるにはまだ何年もかかりそう。

会社のエントランス前に横付けされ、三井さんによって後部座席のドアが開かれた。
社員の目が向けられる中、社長である彼と共に降り立つ。

会社では珍しく爽やかに微笑む彼が、スッと耳元に近づく。

「今夜着る下着は俺の(デザイン)を用意しておくな」
「っっっっっ」

朝から今夜が心配で仕事が手につかなそうです。
だって、男性が女性に服を贈る意味って、『その服を脱がしたい』って意味だから。

~FIN~