「どういう意味ですか?」
「システムの統括責任者としてのプロの意地があるだろ」

社長は納期のことを言ってるんだ。

「俺も同じだ。このブランドを立ち上げ、今日まで築き上げて来たデザイナーとして、経営者としてのプライドがある」
「……」
「より高みへ極めれる術があるのに、それを使わない手はない」
「……」
「俺と勝負しないか」
「……勝負ですか?」
「あぁ」

伊織の口角が緩やかに持ち上がる。

「君はプロとして、納期までに最高のクオリティで仕上げる。それが出来なかったら、俺と専属契約を結ぶ」
「はっ?……専属契約って?」
「久宝 伊織個人として、君と専属契約がしたい。もちろん他の社員には君の下着姿を見せることは無いから安心してくれ」

安心?
社長に見られること自体、問題だと思いますが。

「私が納期までに最高のクオリティでシステムを構築出来たら、社長は何をしてくれるんですか?」
「今の年俸を倍にしてやろう」
「へ?!」

倍?!!
今の給料でさえ、前職より多いのに、これが一気に倍って……。

「その顔だと、交渉成立だな」
「っ……」
「再来週の水曜日、楽しみにしてるよ」

壁に寄り掛かっていた社長が、軽く手を上げその場を後にした。


まさかとは思うけど、私に専属モデルの話をするためにここに来たってこと?

いつから待ってたのだろう?
呼び出すこともできただろうに。
個人的なことだから、気を遣ったの?

それにしても、彼のランジェリー愛と私のシステム愛でガチンコ勝負だなんて。
これ、……私に勝ち目があるんだろうか?