「っやめて…これ以上、泣かせないでっ…」
そんな言葉と共に、温かい涙が頬を伝う。
最近私は、身近な人の温かさが身に染みてわかるようになった。
これまで自分に向けられていた好意も善意も、受け取ってはいけないものだと思っていたから、その温度を感じることが出来なかったけれど。
「そうやって僕の言葉で泣いてくれるとか、本当に可愛い。怒ってるときも、照れてるときも、笑ってるときも…。どんな時の薫子だって、愛おしいんだよ」
「〜っ!!理央のバカ…っ」
理央がこうやって私の体温を上げては、気持ちに込められた熱を感じさせてくれる。
私がいらないって拒んでも、変わらず笑顔で渡してくるから。
「ふっ、薫子限定でね」
身体全体を包み込んで、骨身に染み渡るの。
「ね、薫子…いい?」
理央の熱い視線にはきっと、一生慣れることなんてできないのだろう。
「っ…う、ん」
こくりと頷き、これからされるであろう吸血の準備をした。
あまり痛くはないけれど、顔と顔が近づくのはどうしても緊張と恥ずかしさでいっぱいになる。



