「野中さん!」

空港ターミナルに隣接したホテルのロビーに入ると、中央のソファに座っていた彩乃が立ち上がった。

「彩乃さん、お待たせ致しました」
「いいえ。フライトでお疲れのところ、すみません」
「こちらこそ、出張のあとにおつき合い頂き恐縮です」
「とんでもない。また野中さんに会えるのを楽しみにしておりました」

にっこり微笑む彩乃に、野中は早くも胸がドキドキした。

淡いブルーの涼しげなワンピースが、清楚な雰囲気の彩乃によく似合っている。

野中は彩乃を、予約したレストランへと案内した。

「では、再会を祝して」
「ふふ、そうですね。乾杯」

二人で窓からの夜景を眺めながら、ディナーを楽しむ。

「野中さん。今日の機内アナウンスも素敵でした」
「え?いや、お恥ずかしい。コーパイには、今日はお笑いゼロなのかと突っ込まれました」
「まあ、ふふふ。いつものクスッと笑えるお話も好きですけど、今日のお話はとてもロマンチックでした。私も窓から東京の夕暮れを眺めて、思い出深いフライトになりました。野中さんは、このきれいな夜景も見慣れていらっしゃるのでしょうけど」
「いえ、何度見ても飽きません。それにこうやってあなたと一緒に眺める夜景は、私にとっては新鮮で特別です」

すると彩乃は、少し照れたようにうつむいた。