「ねえ、最近どうなの?彼女出来た?」

運ばれてきた前菜を食べながら、早速こずえがズバッと聞く。

「出来てたら、せっかくのオフにお前と昼間からランチしてると思うか?」
「なーんだ。まだなの?」
「そう言うこずえはどうなんだよ?」
「出来てたら、せっかくのオフにあんたと昼間からランチしてると思う?」
「おい、丸々パクるな」

真顔になる伊沢を、こずえはおかしそうに笑う。

「あっはは!相変わらず真面目な純朴ボーイやってんだ。ちゃんと女の子探しなよ」
「余計なお世話。こずえこそ、まだフリーなのかよ?」
「私はその気になればいつでも彼氏作れるもーん。敢えて今はフリーを楽しんでるの。それで?彼女も探さないで毎日何やってるの?」
「何って、仕事に決まってるだろ?」

そう言うとこずえは、つまんなーい!と椅子に背を預けて腕を組んだ。

「毎日その真面目づらで仕事してるだけ?日々の生活に潤いってもんはないの?」
「真面目づらって…おい。仕事は真面目にするもんだろ?」
「ひゃー、つまんない男ね。こりゃ彼女も出来ない訳だわ」
「なんだよ。仕事中に彼女探せって言うのか?そんな不謹慎な…」

ふと言葉を止めた伊沢の顔を、こずえが覗き込む。

「ん?何、どうかした?」
「いや。そう言えばつい先日、キャプテンが乗客の女の人に、ほわわーんってなってたなーと思って」
「何それー?聞きたい!教えて!いつの話?」

こずえは身を乗り出してくる。

「ほら、あれだよ。俺がグランドスタッフ探し回ってるのを、お前が迷子だと勘違いした時」

伊沢がいきさつを話すと、こずえは興味津々で耳を傾ける。

「そうなんだー!そのキャプテン、運命の人に巡り会っちゃったのねー。それで?そのあとキャプテン、名刺の連絡先に何か連絡したの?」
「それがさ、俺に相談してきたんだよね。どうすればいい?って」
「ええー?あんたに?恋愛偏差値30のあんたに?」

おい、と伊沢は再び真顔になる。

「いいから、続けて?」
「いいからじゃねーよ。ったく…。それで、俺が『ご搭乗ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております』ってだけ書いてメール送ったらどうですか?って提案したんだよ。そこで返事が来るか、もし来たらなんて書いてあるか、そこからまた考えましょうよって」
「なるほど。それで?返事は来たの?」
「いや、分かんない。だってその話したの、昨日だし」
「ひゃー!現在進行形なのね!気になるわー」

両手で頬を押さえてうっとりしたあと、ふとこずえは真剣な顔になる。