「お疲れ様でした。ご指南ありがとうございました。何かありましたでしょうか?」

時間の都合でオフィスでゆっくりデブリーフィングが出来ない為、恵真は席に座ったまま尋ねた。

すると倉科は、思い返しながら真顔になる。

「いや、サークリングアプローチもバッチリだったよ。あんなにきれいな旋回をするコーパイは、初めて見たな。それに風を読むのも上手いね。ギアを接地させながらラダーを切って、機首を滑走路に正対させるのもスムーズだった」
「あ、はい…」

大和とシミュレーションしたウイングローを思い出し、思わず恵真は赤くなってうつむく。

「ん?褒められて照れてるの?やっぱり可愛いね、恵真ちゃん」
「いえ!あの、そういう訳では…」

慌てて顔を上げて否定する。

「ふふふ、まあいいか。さて、ミールを食べたらすぐまたブリーフィングだな」
「はい。よろしくお願い致します」

恵真は顔を引きしめて頭を下げた。