12月に入り、1年前に二人がつき合い始めた同じ日に、恵真と大和は婚姻届を提出した。

晴れて夫婦となった事を会社に報告する。

するとあっという間に話が広まっていった。

「おめでとうございます!」
「あ、その、ありがとうございます…」

会う人会う人に声をかけられ、その度に恵真は頭を下げる。

(なんて速い情報の伝わり方なの。マッハの速さ?)

真剣にそう考えていると、うしろから藤崎さん!と呼ばれた。

振り返ると、広報課の川原がにこにこと近づいてくる。

「聞いたわよー、おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます」
「なんだー、佐倉キャプテンとおつき合いされてたなら、そう教えてくれたら良かったのに。でもそっか、だからあの時…」

あの時?と恵真は首をかしげる。

「あのね、倉科キャプテンとの動画をSNSにアップしたあと、あなたの追っかけが空港であなたのことを、その、じっと見てたらしいの。それに佐倉キャプテンが気づいて、私に話をしに来たのよ。もう動画を上げないように、それから警備スタッフにあなたを守らせるようにって」

ええー?!と恵真は驚いて仰け反る。

そんな話は聞いた事がなかった。

(大和さんが、私の為にそんな事を?)

「うふふ、愛されてるわね。羨ましい。それでね、実は広報課で、早速お二人のことを記事にしようって話してるの。父親と息子が一緒に操縦する親子フライトはたまに聞くけど、夫婦フライトなんて珍しいでしょう?ぜひ、大々的に取り上げようって。あとで佐倉キャプテンにも話しておくわね。忙しくなるわー。それじゃ!」

そそくさと立ち去る川原の背中を見ながら、恵真は、ん?と首をひねる。

「夫婦フライト?何それ?」