「大聖母」を目指す者として、清らかな身であらねばならなかった。当然、婚約者以外の男性に興味を持つとか、ましてや恋愛感情をもってはいけない。

 もっとも、わたしは婚約者に対してもどちらもまったく持たなかったけれど。

 禁欲、とまではいかなくても、とにかく男性に縁遠かったわたしなのに、なぜかその青年の微笑みに胸を射抜かれた。

 そう。まさしく矢で射抜かれた。

 とはいえ、それも一瞬のこと。

 そのまま歩き続けた。