「もっとも、おれはきみだけだ。だから、側妃なんて連れてくることはないがね」

 そして、彼は真剣な表情のままつけ加えた。

(それはそうよね。チャーリーの愛するレディが、最終的には正妃になる。わたしは、その基盤を作るだけの存在。盤石な基盤を作り上げ、彼が愛するレディに譲り渡す。わたしは……。そのままここから、彼の前から去る。だから、貶めることもなければいびることもない。当然、いっしょに彼の尻を叩くこともない)

 そこまで考え、ハッとした。

 わたしってば、なにを言っているの?

 これはしょせん契約結婚。それ以上でも以下でもない。

 しっかりしなさい。やるべきことをしっかりやるのよ。

 ざわつく胸と飛び跳ねる心臓のことは考えないようにし、自分に言いきかせなければならなかった。