「な、なんだと?」

 ()婚約者は、そこそこ美しい顔を真っ赤にした。

「ご心配なく。わたしは、ただの『大聖母』。まやかしにしてお飾りの存在です。そのようなわたしに、あなたや皇族を呪い殺したり破滅させたりという力はございませんので」

 地味でジメジメしている顔に、自分では不気味だと思う笑みを浮かべた。

 そう言ってのけてから、小柄な体を反転させ、大広間を闊歩し始めた。
 周囲だけではない。大広間内にいるパーティーの参加者たちは、一様に唖然としている。

 堂々とするのを心がけた。小柄だけれど、悪女らしくムダにえらそぶった歩き方をする。