文字通り身ひとつで嫁いできたわたしは、衣服の一枚も持っていない。勘当された身である。屋敷に自分の物を取りに行くことも出来なかった。

 それはともかく、部屋には大きなクローゼットがあり、すでにそこに公式の場で着用するドレス、普段着用するドレスを始め、シャツやスカートや靴や装飾品等、すでに数えきれないほど準備されていて驚いた。

 ランダムに試着してみたけれど、まるであつらえたかのようにピッタリなので余計に驚いた。

 ドレッサー、姿見、立派な机に椅子、長椅子にローテーブル。バルコニーにはテーブルと椅子のセットが置いてある。もちろん、お風呂とトイレもある。そして、圧巻なのが壁一面の本棚。専門分野の参考書からいま流行りの小説という書物まで、じつに多種多様な本がびっしり並んでいる。

 これは読みごたえがありそう。