「答えなくていいわよ。その真っ赤な顔がすべてを物語っているのだから。無事に契約は結べたし、眠くなったわ」
「だったら寝室に案内しよう」

 同時に立ち上がった。

「ラン、あらためてこれからよろしく」
「こちらこそ。あなたが好きな人としあわせになれるよう、がんばってイヤーな女でいるわ」

 差し出された手を握り、ブンブンと音がするほど上下に振った。

 彼の手は、貴公子のわりには分厚くごつごつしていた。しかし、とてもあたたかかった。