「ちょ、ちょっと待ってって。『きみ』って?」
「『きみ』って、きみのことだよ、ラン。ラン・ウインザー公爵令嬢。いや、すでにラン・ラザフォード王太子妃殿下だね」
「なぜ? なぜわたしなわけ? あなたの愛する人がわたしって信じられない。チャーリー、嘘よね? 冗談よね?」

 チャーリーは、これみよがしに溜息をついた。

「こんなこと、嘘や冗談で言うわけないだろう? すまない。そもそもおれがちゃんと伝えなかったことが悪かった。きみにどうしてもいっしょにアディントン王国に帰国して欲しくて、おれに興味を持って欲しくて、つい『契約結婚』などという言葉を出してしまった」

 彼は、立ち上がるとローテーブルをまわってこちらにやってきた。そして、ストンと隣に座った。