「レディ、待ってくれないか」

 どこからか声がきこえてきた。

 周囲を見まわすと、木、木、木だけで、レディに該当するのはわたしだけのよう。

 立ち止まり、声のした方向に体ごと向き直った。

 すると、木々の間から影が飛び出してきた。しかも、向いた方向とはほぼ反対側から。

 月光の下に現れたのは、大広間を出て行くときに見た美貌の青年である。

「よかった」

 彼が言った。

 なにがよかったのか、わたしにはわからない。