「王妃。さすがは国母。わしの愛するレディだ」

 そして、国王まで段を降りてきた。

 彼は王妃を軽く抱きしめ、しばしそのままでいた。よりいっそう拍手や国王と王妃を讃える言葉が大きくなる。

「みな、いまひとつ伝えることがある」

 ひとしきり拍手や二人を讃える言葉が大広間内に満ちた後、国王は王妃の手をとり玉座に戻って宣言した。

 その一言で、一瞬にして大広間内に静寂が横たわる。

「いまだ定めていなかった王太子のことだ。わしもこの年齢だ。そろそろ引退し、この座を若い世代に託した方がいいかもしれぬ。ゆえに、この座を継ぐべく王太子を決した」

 あとで知ったことだけれど、国王が遅れてきた理由は王太子を決定する話し合いをしていてそれがなかなか終わらなかったらしい。