「もう二度と戻ってくるな」

 じつの父にまで見捨てられてしまった。

 別にいいんですけど。

「そうですか。わかりました」

 間髪入れずに了承した。

 こんな家、こちらから戻ってやるものですか。

「没落するのを見るに忍びないと思っていたところです。それでしたら、このまま去りましょう。ああ、そうそう。『お世話になりました』や『いままでありがとうございます』は言うつもりはありませんので」

 満面の笑みでそう告げると、さっさと回れ右して歩き始めた。

 とりあえず、ここから去ろう。いいえ。ここから消えたい気分だわ。