「いたっ、いたぞ」

 そのとき、遠くから叫び声がきこえてきた。

「ランッ! やっと見つけたわよ」

 ますます気が重くなった。

 なぜなら、叫び声の主がお父様とお義母様だとわかったから。

 二人は、走るでもなくゆっくり歩いてくる。

 そうして、一定の間隔をおいたところで立ち止まった。

 月光の下、目をそむけたくなるような派手なドレス姿のお義母様は、これみよがしに鼻を鳴らした。

「この恥さらしっ! サリンジャー公爵家とはもうなんの関係もない。このまま去りなさい」

 そのような権限もないのに、お義母様に勘当されてしまった。

 お父様を見ると、彼は一瞬お義母様を盗み見、そして彼女の考えに同調することにしたみたい。