「わざわざ王都から物見遊山にやってくる場所には似つかわしくないと思うがな」

 辺境伯は、わたしたちと会ったときから不機嫌である。それが彼のいつもの状態なのか、それともわたしたちが冷やかしに来ているのだと勘違いしての不機嫌なのかが判然としない。

「こんなところをうろついていて、病が移ったと難癖つけようというのならそうはいかんぞ」

 彼は、立ち止まると体ごとこちらに振り返った。

 すごく大きい。背丈だけではない。筋肉質の体は、まるで山のようである。