「何で? なんでってどうして,だよね。何でもなにも,わたくしちゃまも他のこども達も,最初からしゃべれるよ? そうする理由がないから,みんな寝てるだけ」

「寝てる?」

「そう。おこす? 出来るよ,しゃべりたいの? じおん……んー,いるかな~」


言うが早いか,僕の名前を聞き違えてる花は,勝手に動き出した。



「あっいたー!!! 命令だよ,絶対だよ? 起きて~」



そう花が声をかけたのは……

その辺に咲いていただけの小さな花。

ぞくりと首筋が冷える。

"ただの花"だと思っていたそれは,首をもたげるように動き。



「ふあ……びっくりした,んー…………なーに?」



ふよふよと地面からそう離れてもいない花弁を揺らした。



「えっとねー……なあに? じおん」



見上げるようにした花を,僕は見つめる。

僕は何も言ってないんだから,勝手をしないで欲しい。

僕の頭はとてつもなく警鐘をならし続け,慎重に口を開いた。

当然とも言える。



「……もう一度眠らせることは出来るのか?」

「だって。聞いた? もういいよっ」



よく言えば感情豊か,悪く言えば無鉄砲。



「え,はあい」



ふざけたような口調の僕の花の言葉に,野花はあっさりと大人しくなる。

僕は片手に顔を埋めて,数十秒深く考え込んだ。

受け止めるにも,あと少し理解が及ばない。