彼じゃない。
僕はギラリとメガネ越しに見据える。
彼はモブ太。
失礼なのは分かっているが,僕がどうしても名前や中身を覚えられないうちの1人で,あだ名を付けることでようやく僕が顔を一致させられる人物。
他にもモブ之助にモブ男など何人もいるが,総じてそいつらは大した特徴を持たない。
故に,人殺しなんて度胸のある人間でもない。
僕はその人達を覚えられないのはずっと人と関わらず生きてきたからだと思っている。
もう出逢って数週間だが,いきなり多数は覚えられないのだと言い訳をしていた。
君と三人称で呼べば,特に支障はない。
「ど,どこにいくんですか」
「トイレだ。ココの事もあるし,1人になりたい。……大丈夫。こんなことが起きようとも,僕は死なないから」
心配したのだろう,花つきの僕を。
それくらいはもう,ココやタルトのお陰で察せられるようになった。
僕はココとタルトの欠けた数十人に背を向けて,深い森の中へと進んだ。



