ー野に咲く花の冒険譚ー

わたくしちゃまが考えて,振り返って。

時々言葉にして説明すれば,ジョンはわたくしちゃまからすっと目線を外す。



「ととさまが,ととさまだったもの(死体)になった時……お前はどう思ったんだ?」

「分かんない。分かんなかった。叫びたくて,暴れたくて。でも,それじゃあ足りなかった。ととさまいなくて,寂しい。寂しいけど,違う」



声を出すしか,暴れるしか出来ない存在。

瞳を涙を持たない花に,感情を消化する方法はない。

僕は震える唇を,気合いでおさめる。



「……それがお前の悲しいだろう」



花は僕の全身に大きく絡まった。



「僕達は,協力して生きよう。僕はそのととさまの様に,君を大切にすると誓う」

「優しく,してくれるの? ジョンのすきに,してくれる?」

「ああ,心を尽くす」



口を開き,閉じる。

名を呼ぼうとして,結局この花にそんなものはなかったのだと気付いた。



「……名前がないのは不便だから……君のととさま,ミドルネームはあるのか?」

「プッチーニ」

「じゃあ,リリィ·プッチーニ·エレクトロなんてどうだ?」



義姉妹のようでいいだろうと提案する。

気持ちさえ伝わればいい提案だったけれど,花はキスをするように花弁で僕の頬に触れた。