ー野に咲く花の冒険譚ー




『だめだ!! その子を攻撃するな!!!』



ととさまの声がリアルに聞こえる。

寝ぼけ頭で,つい反射で動きを止めた。

ととさまは,そんなこと言ってないのに。

うつらうつらと寝ていると,リアルな夢はまたやって来る。


『だめだ! そいつを殺すな!!!!』



ととさまが迎えにきてくれたんだと思った。

完全に目を覚ますと,ととさまはいない。

代わりに人間が2人いて,1人はわたくしちゃまにくっついている。

なんだかとても楽しそうで,わたくしちゃまは久しぶりに声をあげた。



『えー!! 殺さないの? いいの? また襲われるんじゃな~い?!!!』



人間は死ぬもの。

わたくしちゃまより弱い。

わたくしちゃまは,そのことをすっごくよく知っていた。

殺さないの?

前に起きていたときは,だめって言われたからしなかった。

でももういいんじゃないかな。

ととさまは死んじゃったし,約束もいつまでか分からないし。

そう思っていた。

ととさまが逆に,あの時殺せといったなら。

わたくしちゃまは何よりも先にそうしたはずだから。

新しく目にした人間は……わたくしちゃまに,ジョンと名乗った。

ととさまには,少しも似ていない人間だった。