「久しぶりだな。お前もすっかり老け込んで」
「誰に聞いたんだ。昔と何も変わってないなら,僕は兄さんなんかに会いたくない。帰ってくれ」
「そんな固いことを言うな。俺もその年になってようやく見えるものがある。やり直そう。母さんもそう言ってる」
疑うように,ととさまは途中まで黙って聞いていた。
わたくしちゃまも驚きながらも,練習した通り黙っていた。
動きもピタリと止めて,目立たないように小さくなっていく。
「母さんが考えを変えるはずがない! もう両親とは縁を切ってるんだ。たまに来る電話だって何も変わらない。電話に出てるだけましだろう?」
初めての大きな声に,わたくしちゃまは小さ
く音を漏らす。
「母さんを悪く言うんじゃない。こんな狭い場所に身を落とす程のやつでも,育ててくれたんじゃないか」
良かったことに,兄さんと言う名前の人には聞こえなかった。



