ー野に咲く花の冒険譚ー





「……まだ寝ているのか? 聞こえるか?」



花はかさかさと動いた。

返事はないが,それでも充分だ。



「お前,大きくなるだろ? 逆も出来るのか?」



花はしゅんと静かになったかと思うと,少しずつ少しずつ腹の位置で小さくなる。

そしてまた静まり,今度は僕の服のなかを移動し始めた。



「ちょ……おい!」



接続部分は何ともないが,葉がこそこそと肌に触れてくすぐったい。

僕が身をよじると,ちょうど花は僕の袖から出てきている。

右手の人差し指まで来た花は,やっぱり黙って,指を抱えるように巻き付いた。

僕はツンツンとアクセサリーのような慣れないそれをつつく。

僕のため息に,それは反応した。