【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 黒い礼服の大きな背中が薔薇の茂みの中に見えなくなっても、身体中が岩のように固まって少しも動けないのだった。

 今や、亡くなった母親の代わりとなって包んでくれるのは——ジルベルトの微笑みと海のように深い優しさ。
 生き地獄だった日々からマリアを救い出し、生き続ける意味を与えてくれたのもジルベルトだ。

「……好きです」

 たとえジルベルトの剣の刃にかけられ、命を失うことになったとしても、後悔はしない。
 本当ならばあの雪の日に、シャルロワの王族たちとともに失っていたはずの命だった。

 ずっと……「許されるかぎり」

 そばを離れないと決めたのだ。

「……大好きです」