○ 心菜の家・1階リビング(夕方)


颯真が自分の家に住むと聞き、驚きを隠せない心菜。


心菜母「颯真くんのご両親は今仕事で海外にいるでしょう? それで実家も今は他の人に貸しているから住めないじゃない?
県外の颯真くんの下宿先から、高校に通うのもしんどいしね」


心菜はチラッと颯真のほうに目をやる。


心菜母「だから、颯真くんのお母さんにお願いされて、教育実習の2週間だけウチに颯真くんが住むことになったのよ。ウチからだと、高校も近いしね」


心菜(そう、だったんだ)


心菜母「夜も家に颯真くんがいてくれると思うと、お母さんも安心して仕事に行けるわ。それじゃあ、行ってくるわね」


これから夜勤のお母さんが家を出て行き、心菜と颯真はふたりきりになる。


どちらも喋ることなく、しばらく部屋には沈黙が流れる。


心菜(き、気まずい……)


心菜「えーっと私、今夕飯作ってる途中だから」


心菜が隣のキッチンへ行こうとしたとき。


後ろからガシッと腕を掴まれてしまった。