再会した幼なじみと、ひとつ屋根の下



○人気の少ない廊下


心菜「はぁっ、颯真く……待ってっ!」


心菜の呼びかけに歩いていた颯真が足を止め、後ろを振り返る。


颯真「なに……?」


颯真のこちらを射るような眼差しに、一瞬ビクッとなる心菜。


心菜「あの、颯真くん。久しぶりだね」

颯真「…………」


心菜(颯真くん、返事してくれない)


辺りには、ピリッとした空気が漂う。


心菜「颯真くん元気だった? ねぇ、こっちにはいつ帰ってきてたの?」


それでも心菜は、めげずに話しかける。


心菜「颯真くんが教師目指してるって知らなかったから、私驚いて……」

颯真「……あのさ、宮脇さん。悪いけど、学校では俺に話しかけないでくれる?」

心菜「……え?」


それだけ言うと、颯真は早足で歩いて行ってしまった。


心菜(『話しかけないで』って、一体どういうこと? それに、あの冷たい目)

さっき自分に向けられた颯真の顔が、心菜の頭の中を過ぎる。


心菜(颯真くんが大学に進学してからのこの約4年間。私は、ずっと颯真くんに会いたかったのに。颯真くんは、違ったの?)

(幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた颯真くんと離れて寂しいって思ってたのは、私だけだったの?)


心菜は、廊下を歩いて行く颯真の後ろ姿をしばらくじっと見つめていた。