しばらくぼーっと、ステージの床を見つめていた心菜。
佑美「ちょっ、心菜、あぶな……」
心菜「えっ?」
隣から佑美の焦った声が聞こえ、心菜が俯いていた顔を上げたのと同時に、心菜のおでこにバスケットボールが直撃した。
心菜「いっ……」
咄嗟におでこを手でおさえる心菜。
心菜(まさか、ステージのほうにバスケットボールが飛んでくるなんて……)
痛みに、心菜は涙が出そうになる。
男子1「宮脇さん! ごっ、ごめん!!」
心菜にバスケットボールを当てた男子が、青い顔で必死に謝ってくる。
男子1「ほんとごめん。だっ、大丈夫?」
心菜「うん、大丈夫だよ」
心菜は男の子に心配をかけさせないようにと、にこっと微笑んでみせる。
心菜(別に血が出たりはしてないし。ちょっと痛むだけだから)
拓弥「ちょっ、心菜。大丈夫かよ!?」
ゲームを中断して、拓弥が心配そうな顔つきでステージへとやって来る。
心菜「うん、平気平気。ちょっと当たっただけだから」
拓弥「はあ? 平気なわけねぇだろ。心菜、おでこ赤くなってんじゃん。俺と保健室行こう」
拓弥がポンと心菜の肩へ手をのせると、その手を横から誰かに掴まれる。
拓弥「え、相川先生?!」
颯真「松木くん。宮脇さんは、俺が責任をもって保健室へ連れてくから」
心菜(そ、颯真くん!?)
颯真「宮脇さん、行くよ」
心菜「えっ」
突然の颯真の登場に心菜が驚いていると、颯真の手が心菜の脇と膝裏にまわされる。
そして、心菜の身体がふわりと宙に浮いた。
複数の女子「キャーッ!」
女子たちの悲鳴にも似た声が体育館中に響く。
心菜(こっ、これってもしかして、お姫様抱っこ!?)
心菜「ちょっと、そう……相川先生下ろして下さい」
颯真「……」
心菜の声を無視し、颯真は心菜を抱えたまま体育館を出ていく。
心菜「ねぇ。学校では、私と話さないんじゃなかったの? こんなことしたら、ただでさえ目立っちゃう」
口元に手を添え、小声で颯真に話す心菜。
廊下ですれ違う生徒は皆、心菜たちをちらちら見ている。
颯真「……そんなことより、心菜のほうが大事だから。もし何かあったら、どうすんの」
心菜「……っ」
心菜(どうしよう。『心菜のほうが大事』なんて言われたら、嬉しすぎてやばい)
颯真の言葉に感激した心菜は、颯真の首にそっと自分の腕をまわした。



