○心菜の家・1階ダイニング。(19時頃)


心菜の母は出かけているため、心菜と颯真が二人で夕食をとっている。



颯真「なあ。今日学校で心菜がフィナンシェを渡してた奴……松木くんだっけ?」

心菜「……ぶっ!」


颯真に聞かれ、心菜は飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになる。


颯真「その子とは、仲良いの?」

心菜「けほっ。颯真くん、見てたの?」

颯真「朝のホームルーム前に教室に来たら、たまたま見えたから」

心菜「た、拓弥は、ただの友達だから。ごほごほっ」

颯真「ふーん。まあ、本当に“ ただの友達 ” なら良いけどさ」


むせる心菜の背中を、颯真が優しくさすってくれる。


颯真「俺以外の男が、お前のことを“心菜”って呼んでて。仲良さそうにしてるのを見て、なんかムカついた」

心菜(えっ)

心菜(ムカついたって颯真くん、それってもしかして……嫉妬?)


心菜の後ろで彼女の背中をさすっている颯真の顔は、ほんのりと赤くなっていた。


ーー数分後。


颯真「心菜、落ち着いた?」

心菜「うっ、うん。背中さすってくれてありがとう」

颯真「そう、良かった」


颯真がニコッと微笑んでくれる。


それからは、黙々と夕食をとる二人。


颯真「ごちそうさま」


ご飯粒ひとつ残さず完食した颯真の食器を見て、笑顔になる心菜。


心菜「颯真くん。いつも綺麗に食べてくれてありがとう」

颯真「こちらこそ、いつも美味いご飯を作ってくれてありがとう。俺、心菜が作る飯すげー好き」


心菜(颯真くん、嬉しいこと言ってくれるなぁ)


颯真「そうだ。今日、学校帰りにシュークリーム買ってきたんだ。一緒に食べよ」