再会した幼なじみと、ひとつ屋根の下



夕食後、キッチンでお菓子作りをする心菜。


颯真「なんかいい匂いする。何作ってんの?」

心菜「フィナンシェだよ」

颯真「フィナンシェ? お、美味そう」


オーブンから取り出し、出来たてのフィナンシェを颯真がじっと見てくる。


心菜「明日友達の誕生日だから。学校に持っていこうと思って」

颯真「へぇー。なぁ、俺にも食わせて?」


心菜(そういえば……)

心菜は、颯真が昔からチョコとか甘いものが大好きだったことを思い出した。

しかし。


心菜「いっ、嫌だよ」

心菜(さっき、カレーライスに苦手な人参をわざと沢山盛られたし)


心菜「意地悪した人にはあげません」


ふいっと颯真から顔を背け、味見のため心菜がフィナンシェをパクッとひと口。


心菜「んっ、バターの風味が香ばしくて美味しい」
心菜(我ながら、よくできた)

小さくガッツポーズする心菜。


そして美味しそうに食べる心菜を見て、颯真はゴクリと唾を飲み込む。


颯真「さっきはごめん。俺、昔から心菜にはつい意地悪したくなるんだよな。だってお前可愛いから。ほんと可愛すぎる心菜が悪い」

心菜(か、可愛い!?)


颯真「でも、これからはもうしないからさ。お願い、許して?」

心菜「えー、本当に?」

颯真「うん。本当だから……」


颯真の顔が、心菜の手元に近づいてくる。
そして……。


──パクッ。


心菜の手にある食べかけのフィナンシェに、颯真がかぶりついた。


心菜(……え?)


颯真「うん。これ、お店にも負けないくらいめちゃくちゃ美味いよ」


心菜(ちょっ、今のって間接キスなんじゃ!? しかも、私の手に颯真くんの唇が触れたんだけど)


頬が熱くなる心菜に対し、何事もなかったかのようにフィナンシェをモグモグする颯真。


颯真「ごちそうさま、心菜」


満足げにそれだけ言うと、颯真はキッチンから出ていく。


心菜(えーっ。もしかして、意識してるのは私だけ? 颯真くんは何とも思ってないのー?)