「ありがとうございます。マカロンすっごく可愛い見た目で、お客様の反応がとっても良かったの。お嬢様が生み出すお菓子はどれも人を笑顔にする魔法みたい」
「魔法みたいだなんて。そんな大層なものは作っていないわ」

 私が作るお菓子に幸せになるよう願いを込めれば、食べる人は笑顔になってくれる。けど、魔法使いの一族でもない私に本物の魔法みたいな力はない。作り手である私の感情が食べる人に影響すると、勝手に私が解釈しているだけで真相は分からない。
 ものの例えだろうけど、ネル君にそんな風な言葉を掛けられて気後れしてしまった。

「お嬢様は自分にもっと自信を持って。直向きに頑張っているお嬢様はとっても素敵なの。このレモン味のマカロン、ずっと試行錯誤してたでしょ?」
 レモン味のマカロンは酸味に納得がいかなくて、何度も改良を続けていたものだ。
 まさかネル君がそれに気づいてくれていたなんて驚きで、私は目を瞠った。

 図星を突かれる形になってしまったけれど、正直なところ私には自信がなかった。
 だって、最近頑張ったことは――特にフィリップ様のために頑張っていたこと――すべてが空回りに終わっていたから。