「僕がお嬢様のお店をですか?」
「あ、今のは聞き流してね。ネル君はお客様に商品の説明をするのがとても上手だったから手伝ってくれたら嬉しいなって個人的に思っただけなの」

 私は言葉を取り繕った。いくらなんでも十二歳くらいの少年を従業員としてスカウトするのはどうかしている。
 それにこの国で十二歳以下の子供に労働をさせることは法律で禁止されている。見つかれば即時に業務停止命令が下るし、警備隊に捕まって投獄されることになる。
 これについてはネル君も分かっていると思うからただの冗談として聞き流してくれるだろう。と、思いきや、ネル君はぱっと顔を輝かせた。

「良いんですか? 是非やらせてください!」
「えっ。だ、だけど知っての通りネル君の歳で働くことは禁止されているわ」
 言った本人である私が慌てていると、ネル君は顎に手をつけて考える素振りをみせる。
「……だったら名目を労働にしなければいいし、対価もお金にしなければいいの。法律上では八時間労働が禁止されているから、それより短い時間なら問題ないでしょ?」