「ネル君、是非私の作ったお菓子を食べて帰って!」
「えっ? で、でも僕は今お金を持ってないから無銭飲食になっちゃう……」
「無銭飲食になんかならないわ。ラナを助けてくれたお礼よ。それに私がネル君と一緒にお茶がしたいの。だから、ねっ?」

 私がお茶に招待するとたちまちネル君は破顔する。
「ありがとうございます。お嬢様とお茶を一緒にできるなんてとっても光栄です」
 えへへと相好を崩す姿に私は手で目元を覆って天井を仰いだ。

 ――嗚呼、可愛い。可愛すぎる! こんなに可愛い美少年が私のお菓子を食べてくれる姿をまた拝めるなんて……まさに眼福!!

 私の心臓がきゅうっと音を立てて締め付けられる。
 可能ならネル君には毎日お菓子を食べてもらいたい。そんな欲望でいっぱいになっていると厨房にいたラナが店内に戻ってきた。手にはお盆が握られていて、その上には三つのカップとティーポット、そして今日のご褒美のために取っておいた数枚のフロランタンがのっている。