「女性客をターゲットにして媚びを売ろうとしているのが丸わかりですわね。あからさますぎて却って見苦しいですわよ。お菓子は何十年、古いものでは何百年と伝統的な形状を崩さずに伝わってきました。いわば、あの形こそがそれぞれのお菓子の最終形態。この店はそんなお菓子を冒涜していますわ!!」

 ジャクリーン様の言わんとすることは理解できる。


 お菓子は焼きムラをなくすためや美味しい味を引き出すために形が決まっているものもある。そういったお菓子は基礎の部分は改良せずにこれまでの作り方を重んじている。

 だけど、それを説明したところでジャクリーン様は言いがかりをつけたいだけだろうから、納得なんてしないだろう。

「えっと……ええっとですねっ」
「あなたじゃ話になりませんわ。店主であるキュール令嬢を呼びなさい! 今すぐに!!」

 詰め寄られたラナはジャクリーン様の気迫に負けて完全に萎縮してしまっている。
 ジャクリーン様は言葉を詰まらせているラナを新たな標的にして難癖をつけてくる。