「これはただの偶然です、私は盗んでませんっ……」
 持ち主である王族のエードリヒ様が本物だと証言しているのに、カリナ様は自分が犯人だと認めない。
 エードリヒ様が困ったな、と苦笑するとアル様が小さく息を吐く。
「仕方がないからもう一つのとっておきを教えてあげる。秘宝は王家の人間でしか指にはめることができない。他の人間がはめようとしてもはまらないようになっているんだ」
 アル様はフィリップ様に近づくと指輪を差し出して指にはめよう促した。

 受け取ったフィリップ様が指にはめようと試みるが、説明されたとおりどの指にも指輪がはまることはなかった。
「次は私の番のようだな」
 エードリヒ様がフィリップ様からひょいと指輪を取り上げると人差し指へと指輪を通す。
 指輪は王族であるフィリップ様の指に綺麗に収まった。
 もうこれ以上、カリナ様が言い逃れることはできない。
「さて、これでもまだ自分が犯人ではないと?」
 いつの間にか、会場には複数の近衛騎士が待機していて、盗みを働いたカリナ様が逃げられないよう出入り口を塞いでいる。
 言い逃れも逃亡もできないと悟ったカリナ様は顔を手で覆い俯くとその場に崩れ落ちた。