「わたくしもシュゼット様のパティスリーにはお世話になっているので分かりますわ。どのお菓子も可愛らしいですし、味も確かです。こういった場に使うのも最適だと思いますわ。シュゼット様ならその場に応じた素敵なお菓子を作ってくださるはずですから」
 ジャクリーン様は手に持つ扇を優雅に扇ぎながら周囲を見回して話す。好意的な感想を口にしてくれたお陰で、周りの視線が少し和らいだような気がした。敵ばかりがいる会場で味方になってくれる人がいるのは心強い。
 ジャクリーン様と目が合うと、頑張ってというように片目を瞑ってきたので私は小さく頷いた。


「ですがカリナ様は少し前まで王宮で王妃殿下付きの侍女をしていましたでしょう? 期限付きではありますが侯爵令嬢のお店に行く機会なんてなかったのでは?」
 カリナ様と親しくないので事情をよく知らなかったけれど、どうやら王宮で王妃殿下付きの侍女として奉公に出ていたらしい。
 奉公中は直属の上長から許可をもらわない限り自由に王宮の外には出られない。だから招待客の一人はいつカリナ様が私のお店に足を運んだのか不思議に思っているようだった。
 その質問にカリナ様がはにかみながら答える。
「公休でシュゼット様のパティスリーへ一度だけ行ったことがあります。お菓子はとても美味しくて忘れられない味でした。だから年季が明けてケーキを頼むことがあれば、私が大好物のいちごがたっぷり使われたケーキが食べてみたかったんですっ。うふふ。今からどんなものが出てくるかとっても楽しみですわ。ねえ、シュゼット様?」
 最後の言葉は依頼のものはきちんとできているんだろうなという確認の意図が込められている。