「シュゼット令嬢、早くエンゲージケーキを完成させてください。僕もできることがあるなら手伝います。指示してくださればその通りに動きますので!」
「お気持ちはありがたいですけどそれはちょっと……」

 大事なお客様にお店の手伝いをさせるわけにはいかない。今日だって本当はお菓子を食べにパティスリーへ来てくれたはずなのにわざわざ私を迎えに来てあの浮浪者から助けてくれた。

「いつも美味しいお菓子を食べさせてもらっているし、このくらいはさせて欲しいな」
「ですが……」
 決めかねているとなかなかお店に来ない私の様子を見にラナが戻ってきた。

 丁度今の会話を聞いたのだろう。ラナはパンッと手を合わせるとにっこりと笑顔を作ると、アル様に話しかける。
「それではアル様は私と一緒に果物を洗うのを手伝ってください。今、猫の手も借りたいくらい忙しいんですよう」
「ちょっと、ラナ!」