「お待ちしてました。本日もお仕事お疲れ様です」
 フリルのついたエプロンをつけた私が手に持つお盆の上には、準備が整ったティーセットとナパージュされたつやつやのフルーツケーキが二人分置かれている。

 青年は私を目に留めて破顔すると半個室となっているイートインスペースへ移動して腰を下ろす。花柄の円いポットから淹れたてのお茶をカップに注いで出せば、早速一口飲んでくれる。
 青年は喉の渇きを潤すとフォークとナイフを手に取り、宝石のように輝くフルーツケーキを一口大にカットして口へと運んだ。

 口に含んだその瞬間、青年はこれ以上の幸せなどこの世にないというように頬を紅潮させ、恍惚とした表情を浮かべる。
 私は向かいの席に腰を下ろすと、テーブルに両肘をついてその上に顎を乗せる。

 そして、いつものように彼の様子を眺めて目を細めるのだった。