アル様からお墨付きをもらった野菜のお菓子を、翌朝お忍びでやって来たエードリヒ様にも食べてもらった。結果は三種類とも彼の口から「美味」という言葉を引き出すことに成功した。

 エードリヒ様はすぐに報告しなければと言って、いそいそと私が用意していた王妃殿下用のお菓子の詰め合わせとレシピを持って帰った。

 あんなにはしゃいでいるエードリヒ様を見るのは初めてだ。
 それくらい野菜のお菓子が口に合ったんだと思うと一生懸命作った甲斐があったなと感慨深い気持ちになる。
 国内視察で巡行していたこともあり宮廷料理から地方の独特な伝統料理まで多岐にわたる料理を食べてきているはずだ。
 その彼のはしゃぎっぷりを見ていると私も手応えを感じたし、当日来場する貴族たちにも受け入れられそうな気がして自信が持てる。

 ――だけどまずは最大の難関である王妃殿下ね。彼女に美味しいと思ってもらうことができれば良いのだけれど。
 結果が届くのは早くても明日以降だと思って構えていると、驚くことに午後になってエードリヒ様が戻ってきた。

「母上からの返事を伝えに来た。どのお菓子も是非採用させて欲しいとのことだ」
「それは本当なの? 随分お返事が早いけど採用してもらって大丈夫かしら!?」
 あまりにも早い結果に狼狽えていると、エードリヒ様が懐から一通の書簡を渡してくれる。それは王妃殿下専用の封蝋がされていて、中を開いてみると便箋三枚にわたって長々と野菜のお菓子に対する賛辞が並べ立てられていた。