何故なら子供の姿でいる時にどれだけ好意を示しても、彼女がこちらに対して恋愛的な好意を示してくれていることは一切なかったからだ。
 ――そもそも年端もいかない少年に恋愛感情を抱くなんて普通はありえないことだから仕方がないんだけど。
 とはいえ、少しはアルとしての片鱗くらいは見えないものだろうか。髪の色も目の色も同じで、面差しだって大して変わらないと思う。
「大陸では魔法や超自然的な現象は非日常だし、ネルがアルだなんて想像もつかないんだろうな」
 自分に言い含めるようにアルは呟く。

 アルの姿をしている時のシュゼットを振り返ると、前と比べて照れる素振りを見せてくるようになった。ただの大切なお客ではなく、男として意識してくれているのならそれはとても嬉しい……が、まだどういう感情を抱いているのか確信が持てないでいる。
 唯一はっきりしたことはエードリヒをどう思っているかだった。
 シュゼットはエードリヒのことを頼りになる優しい兄的な存在だと言っていた。つまり、シュゼットに自分を好きになってもらう余地がまだあるということだ。
 シュゼットのエードリヒに対する感情が恋愛に変わってもおかしくないから油断は禁物だけれど。このままアルの姿で好意を示し続ければ、いずれは振り向いてくれるかもしれない。