……だけど、どうしてアル様にエードリヒ様の関係を疑われるのがこんなにも辛いのだろう。他の人にエードリヒ様との関係を尋ねられてもなんともないのに、アル様に誤解されるのは胸が苦しくなる。
 自分の感情を分析しないよう封印していたのに、再び分析に取り掛かろうとしている自分に気がついて、私はぶんぶんと頭を振る。
 その間にアル様はカップに入ったお茶を堪能していた。カップのお茶が空になると辺りを見回してから困ったというように頬を掻く。
「シュゼット令嬢、いつもみたいにお茶のお代わりをもらえるかな?」
「あ、ごめんなさい。ティーポットを忘れていたみたい。すぐにお持ちしますね」
 ラナに厨房から追い出された際、ティーポットを持ってくるのを忘れてしまっていた。
 急いで踵を返そうとすると、アル様に呼び止められる。
「慌てなくて大丈夫。ゆっくりでいいから、美味しいお茶を淹れて欲しいな。僕は君のお茶が大好きだから」
「……っ」

 紺青色の目を細めて顔を綻ばせているアル様はこれまでの比にならないくらいの破壊力があった。
 私の心臓が一瞬止まってしまう。程なくして思い出したように再び鼓動が脈打ち始めるのに、その速さはどんどん加速していく。