私は厨房の覗き窓から店内の様子を眺めた。
 店内は今日も賑わいをみせていて、ラナとネル君が甲斐甲斐しく働いている。いつものようにラナはカウンターに立って会計を担当していて、ネル君は接客をしている。
 ――あれは確か……カリナ様の従者、ハリス?
 私服だから気がつかなかったけれどネル君と話をしていたのはハリスだった。どうやら今日は一人でここに来ているようだ。いちごのマカロンを指さしながらネル君と談笑している。誰か好きな人でもいるのか彼の微笑みには甘酸っぱい雰囲気があった。
 ――誰かへの贈り物なのかしら。無事に渡せるといいわね。
 近頃はショーウィンドウの飾り付けをナチュラルテイストにしたことによって女性のお客様の他に男性のお客様の姿もしばしば見受けられるようになった。
 男性のお客様が気兼ねなく店内に入ってこられるようになったのも、アル様が勇気を出してお店に来てくれたから。彼が足を運んでくれなければ今頃男性のお客様は二の足を踏んでいたことだろう。
 ――改めて、アル様にはお礼をしないといけないわ。


 私は黄昏時にやって来るアル様を想像した。