「ふふっ」
突如,笑いが込み上げた。
月くんも驚いたような顔をする。
それも,当たり前か。
だけどもう,笑ってしまったから,しょうがないことにしよう。
好きになってって,振り向いてってずっと思っていたはずなのに。
もうそれでもいいやって,なぜか嬉しくなってしまう自分が不思議で。
どれだけにぶくても,月くんが好きすぎて,それがとてもおかしく思えてしまったんだ。
「奥西さん」
「ふ,はは……なあに?」
さっきまで眠っていたからだろうか。
感情が上手く制御できなくて,ふわふわして,おかしくなってくる。
「奥西さん,やっぱり笑ってた方がいいよ」
「え」
私はピタリと動きを止めた。
じわりと体温が上がる。
体温計は見つからない,良かった。
「クラスのやつがさ,分かる? 林とか西片のこと。奥西さんと話せる男子は俺だけとか,奥西さんは笑わないとか,よく,言ってくるんだけど」
それは,良くあること。
笑おうと思って笑うことは少ないし,周りに人の少ない私は,むやみに笑う機会もあまりない。
男子の中じゃ月くんとばかり話しているのも,別に私が寄せ付けないようにしているわけではなくて。
第一印象で,勝手に敬遠されているだけ。
それで月くんに迷惑を掛けてるなら,すこし,落ち込む。
「奥西さんは笑ってた方が可愛い。だから,そうしてれば林達も奥西さんと普通に話していいんだって分かると思う」



