「持ち歩いてるの? ありがとう」

「ポケットティッシュの口のところに,いつも数枚だけ入れてるの。より固定したかったら,ごめん,テープは教室にしかない」



意味があるものを最小限でしか持っていない。

役に立てば程度の,かさばらなさを重視しているからだった。

早速開けようとする月くんを,私が止める。



「待って。消毒は見つからないから,せめてそこで洗ってからにした方がいい」

「でも俺ハンカチが教……」

「それくらい,貸してあげるってば」

「ありがとう」



月くんは私を振り返った。

その顔には笑みが乗っている。



「なんか奥西さん,俺のねぇちゃんみたい。友達は姉弟なんていらないっていうけど,俺のねぇちゃん優しいから」

「そ」



それが,今の月くんの本音。

そこから変わることさえもう,難しんだろうな。

でも。

きっとねぇちゃんっていうのは,月くんにとって大切な存在だから。

必要とされてるなら,まぁ,いいか。