格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。

「いてて……ごめん月くん」



そっと離れる私を引き留めるように,月くんは私の頬に手を添える。

湧いた疑問に上目になれば,心臓が止まった。

きゅっと目を閉じる。

いくらなんでも戸惑いが隠せない。

と,添えてた方とは逆の頬に,小さな感触があった。

ぱちぱちと,乾いてもない瞳を瞬く。



「ほんとだ」



そう嬉しそうに純粋な笑顔を向けた月くんは



「かわいい」



その表情に釘付けになって見惚れる私をみて,とろけるような笑みを浮かべた。



「ともりちゃんって,呼んでもいい? 真っ赤なのみてたら,そうしたくなった」



あり得ない。

存在もなにもかも。

あんなに,好きな人の前じゃ,意識する人の前じゃだめだめで。

とにかく鈍感で,残念で。

格好なんてつかなかったのが月くんのはずなのに。

私がいいと,好きだと言ってなお。

こんなに格好いいのは,どうしてなの。

私はきゅっと,月くんの手の甲をつねった。



「いたっ」



なんでって,それは自分で考えてよね。



                  ーFin