月くんは瞳が零れるほど目を見開いた。
「え……?」
それがどちらの声だったのか分からない。
表情の変化を目にしていた私の前で,月くんは真っ赤に染まっていった。
「え,俺いつことわ……っ」
「や,あの……断られては,ない。だって今初めて,言ったから……私が勝手にもう届かないって思って……」
失恋とか余計な話をしたせいで,少しややこしくなってしまう。
その裏で,私に月くんのその反応を引き出せたことが,少し嬉しかった。
「奥西さん,俺のこと,すき?」
「うん……」
「俺に毎日逢いたいの,一緒にいたいの」
「……うん」
あれは全部君にあげた言葉。
それが思いがけず伝わってしまい,私は恥ずかしい思いをする。
あんなのそうと気づかれたら,告白と変わらない。
「奥西さん,俺とちゅー出来るの?」
「それは!!」
またちょっと別の話。
本人を前に慌てた私は,あろうことか。
スカートをふんずけ,傾いた。
そう,前方へ躓いた。
流石にどんくさすぎる。
受け止めた月くんの腕のなか,私の頭にはそんな冷静な自分がいた。



