私は,いつ,どうして月くんのことを恋愛として好きだと思ったのかは分からない。

その時,既にどう見たって月くんは雪乃さんのことが好きだったし。

でも,私は月くんを見てると胸が温かく鎮まって,ざわめいて,きゅんとときめく。

だから,その理由を言葉や口で表現できなくても,私にいつかそういう感情を抱く日が来ると言うなら……

私は,この気持ちを恋と呼びたいと思った。

それが,私は私が月くんを好きだと言う根拠だと思う。

同じような日々をまた何日か繰り返したある日,私は月くんに訊ねた。



「月くんは,どうして雪乃さんのことが好きなの?」



どんな答えが来ても,幸せな結果なんて来ないのに。

変わらない日常にしびれを切らして,とうとう聞いてしまった。

私はずっとこうだけど,月くんは何でなの?

そんな感情で,そっけなく表情に気を付けながらどきどきと返事を待つ。



「めっっっちゃ可愛いから」



絞り出すように強い返事だった。

予想を斜めに上回る回答に,私は目蓋を上に持ち上げる。



「ビジュが好みだからってこと?」

「えっ……いや! でも!! 大事じゃんそれも! 一般的に可愛くないって子が可愛い人だっているし!! 俺のは雪乃さんが可愛くて優しい,それが理由!」



はいおしまい,と言うように,慌てた月くんは両手を合わせた。

それでも止まらずに,私はまた口を開く。